インボイスインボイスっていうけど
大家さんは、どういう対応を迫られるの?
また、インボイス登録はした方が良いの?
という疑問を解決して行こうと思います。
免税事業者は益税がなくなります!
この制度は、免税事業者こそ影響がある制度です。
課税売上が、1000万円以上あるかないかですが・・・
課税売上になるもの | 非課税売上になるもの |
店舗事務所の家賃、共益費 | 住宅用の家賃、共益費 |
駐車場の賃料 | 土地の賃貸料 |
賃貸建物の売却金額 | 土地の売却金額 |
テナントの家賃や駐車場賃料等の合計の売上が
1000万円以上あったら
課税事業者になります。
消費税というのは一般消費者が払っているわけではなくて
事業者に納めさせている税金(間接税)です。
事業者は
売上にかかる消費税 | - 仕入れにかかる消費税 | = 納税(還付) |
(預かった消費税) | (支払った消費税) |
で、納税するわけですが・・・
免税事業者は、消費税をもらっても、仕入れの時にかかった税金は
免除されていました(益税)
が、インボイスが始まると益税がなくなります。
影響は借主(仕入れ業者)の方に出ます。
⇒インボイス登録事業者が発行する
請求書や領収書がないと、
仕入れ税額控除をさせないという制度なので・・・
(※仕入れにかかる消費税 ⇒ 仕入れ税額控除)
免税事業者の家主に家賃+消費税を払っていたら・・・
インボイスを発行してもらえないので
仕入れ税額控除してもらえません・・・(ノд-。)
よけいな消費税を払わなければいけなくなるのです。
借主は免税事業者の家主と取引すると、
消費税の負担を強いられてしまうのです。
免税事業者の大家から借りると損?!
上記で説明したように、免税事業者と取引すると
仕入れ税額控除してもらえないので
取引先(借主)が消費税の負担を強いられてしまう
・・・ということは
借主は、免税事業者の大家から借りると、損する!
と考えられてしまうと、次にでる行動は・・・
- 退去して、インボイス登録している貸主の物件を借りる
- 貸主に消費税分を減額するよう要求する
・・大家さん(家主)の選択肢は
- 課税事業者となってインボイス登録事業者となる
- 家賃のうち消費税分を減額する
という結果になります。
どちらが良いのでしょう~・・・(~_~;)
インボイス登録するかどうかのポイント
インボイス登録した方が良いのかどうかは
以下のポイントで判断しましょう。
⇒インボイス登録する
⇒インボイス登録の必要なし
⇒登録するかしないかの判断が必要!!
借主に着目しましょう!!
借主が免税事業者であれば
仕入れ額控除は
影響ないことになります。
例えば、マンションなどに併設している駐車場は
課税売上の対象ですが
駐車場を借りている人は、たいてい
マンションに入居されている
一般の方、つまり免税事業者であると思われますので
影響はない可能性があります。
インボイス登録をして、課税事業者になり
簡易課税制度を使って消費税分を受け取って納税しても
消費税申告の手間や、税理士に依頼する場合の費用を考えると
どちらも差が無いように思えます。。。
それなら、免税事業者を維持して
消費税をもらわないという判断でも
良いのではないでしょうか。
判断材料の目安は、
課税売上200万円未満かどうか
未満なら消費税の負担分と値下げによる負担分に大きな差はありません。
ただし、オーナーがインボイス登録しているかどうかは
確認すればわかってしまいますので
契約書の見直しは必須です。
マンションなどに併設している駐車場等は
今まで、貸主としては消費税を取ってないと認識していても
借主側は、消費税が含まれていると認識している場合がほとんどです。
その場合、契約書に、金額がどのように記載されているか
確認しましょう。
例えば『駐車場代、月1万円』としか書かれていない場合
本体価格なのか、税込価格なのかが不明確です。
ですので、インボイス開始前までに
ひとつの例ですが、下記のように契約書に
明記すると認識の相違がなくなります。
(例)10,000円(税込。ただし、11,000円のうち消費税分
1,000円を値引きした金額)
緩和措置があるからインボイス登録した方が良い?
「小規模事業者」に配慮した消費税の計算方法に関する特例で
簡易課税制度というものがあります。
(※簡易課税制度の適用は、選択届出書の提出
基準期間の売上高が5000万円以下などの要件が必要)
この簡易課税制度というのは
売上にかかる消費税 | - 仕入れにかかる消費税 | = 納税(還付) |
(預かった消費税) | (支払った消費税) |
という計算をしなくてよい
「みなし仕入れ率」というものを掛けて行くもので
業種によって数字が違いますが
不動産賃貸業の場合は40%の掛け率
つまり、売り上げにかかる消費税のうち40%控除してくれる
逆に言えば、売り上げにかかる消費税のうち
6割納めてくれれば良い という制度です。
今回のインボイス制度で
「免税事業者→課税事業者」になった事業者
(令和5年10月1日~令和8年9月30日の期間)は
緩和措置(3年間)があり
売り上げにかかる消費税のうち
2割納めれば良い(80%控除)という措置なので
大変、優遇されていますね。
しかも、この緩和措置を適用するのは
⇒確定申告書に適用を受ける旨を付記するだけです。
簡易課税制度の届け出をしていても、適用することができるので
有利な方を選択すればよいかと思います。
また、免税事業者からの課税仕入れでも
経過措置(6年間)があり
最初の3年間は80%控除
次の3年間は50%控除と
段階的に、仕入れ額相当額の一定割合を控除できます。
注意点は、一旦インボイス登録をしてしまうと
課税期間は免税事業者に戻れないため
経過措置の適用はできません。
緩和措置を利用してインボイス登録する場合の方が
若干、有利になりますが
消費税の申告の手間や税理士などの専門家に
依頼する場合の費用の負担などのことを考えると
免税事業者のまま、仕入れ額控除ができない部分に
相当する金額を値引きすることで
取引先の負担がないように
値引き交渉ができるのであれば、
免税事業者を維持する方向で
考えた方がよいのではないでしょうか?
インボイス登録する落とし穴
賃貸経営の課税売上は、店舗、事務所、駐車場収入のように
消費税がかかっていると目に見えるものだけではありません。
課税事業者になると
下記の取引についても消費税を納めることになります。
これを「隠れ課税売上」と言っています。
- 入居者負担分の原状回復工事費用入居者から預かった敷金で、現状回復費用に
充当されるお金(クリーニング費用修繕費等)は課税売上になります。
- 共益費とは別に徴収する電気代・水道代預り金処理をしている場合、単なる立替金で差額が生じない場合は不課税。
問題は徴収する金額と家主が支払う金額に差額が生じる場合、全額課税。
(テナント物件だけではなく、普通のアパートやマンションもです。)
- 賃貸物件(事業用・住宅用を問わず)を売却した場合の建物売却代金・固定資産税清算金
↓
インボイス登録をしてしまうと、隠れ課税売上にも消費税がかかって来てしまいます。
簡易課税制度(もしくは緩和措置)で納税を取るか
消費税分家賃値下げして隠れ課税売上の
消費税を取られないようにするかの比較が必要です。
※ちなみに、免税事業者だからといって
消費税を請求してはいけないという規定にはなっていません。
(ただし、消費税と明記すると誤認されてしまいますので注意が必要です。)
あくまで
『インボイスがないと仕入税額控除しない』
ということを決めているだけです。
インボイス登録(課税事業者)を強制するものでもなく
消費税分を徴収してはいけないと決めているわけではありません。
国は、売主、買主、どちらからでもいいので
消費税を取りっぱぐれないようにするための
制度を作った、ということです。
消費税を売主、買主、どちらが負担するのかは
お互いに話し合って下さい、ということなのです。
ですので、インボイス制度が始まる前に
取引先と、しっかりと話し合いをしておきましょう。
管理会社に依頼している場合の気を付けておきたい話
管理会社(仕入れ事業者)も大打撃を受けます。
管理会社がいつも発注している
外注工事業者が免税事業者だったら・・・
管理会社は消費税ひけないので、そっくりそのまま
大家(免税事業者)さんに消費税分を上乗せして
請求されることが考えられます。
外注業者と管理会社の間でインボイスの話し合いが
充分になされずに、負担が増えた消費税を
安易に賃貸オーナーに負担させる可能性が出て来るのです。
インボイス登録が始まる前に
しっかりと話し合いをしておくことが必要です。
- 免税事業者は益税がなくなります!
- 免税事業者と取引きすると消費税の負担を強いられてしまいます!
- 登録するかどうかのポイントは、課税売上200万円未満かどうか
- 簡易課税制度、緩和措置が利用できます
- 課税事業者になると、隠れ課税売上が発生!
- 管理会社に依頼している場合の注意点
この他、まだまだ、インボイス制度の影響について
生前贈与、相続登記、電子帳簿保存法などなど
内容が盛りだくさんありますが
わかりやすく詳細に書かれいる本のご紹介
渡邊浩滋先生の
「相続したボロ物件どうする? 賃貸アパート経営の道しるべ 」
大変、お勉強になる本でした。
この本の著者、大家さん専門税理士
「渡邊浩滋」さん は 司法書士でもあり、
自らも、アパート経営をされておられ
賃貸経営の分析・改善も請け負っておられます。
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